Lesson 23 - 闇夜の空中散歩
「飛べない豚は、ただの豚さ」
この台詞が心の端に引っかかり、はや十年以上。そして、この一年間はLAに島流し。一念発起、合法的に「空飛ぶ」免許を取ることにしました。
サンタモニカ空港 PM 8:00
いつもと違った夜の表情を見せる空港。
オペラハウスに集う淑女のように、華やかにフラッシュライトをきらめかせて離陸を待つ飛行機たち。
決して交わることは無いのに、「いつかはひとつに」と儚い望みを誘う滑走路の二筋の光。
普段は厳正な佇まいをみせる管制塔が、今夜は優しく見える。
エンジンの爆音に包まれているにもかかわらず、何故か物静かな気分になる。
「Clear To Take Off]
管制塔の合図とともに、スロットルを全開にし、スピードを臨界点まで引き上げ、漆黒の闇に向けて機首を持ち上げる。
今まで目の前に横一列に並んでいた街の光が、あっという間に混乱の渦に吸い込まれ、そして眼下一杯にぶちまけられる。
満天の星空をひっくり返したように、どこまでも続く闇と輝きの世界。
遥か遠くにはダウンタウンの摩天楼が、見るもの全てを魅了する圧倒的な姿で、こちらに微笑みかけてくる。
激しい乱気流が機体を揺さぶり、光の渦はさらに混乱を極め、ちっぽけな飛行機は、ややもするとその行き先を見失いそうになる。
少し不安になり、機体を大きく旋回させ、今までの軌跡をふと振り返ると、さっき飛び立ったばかりの空港の光が、控えめながらも「いつでも帰れる居場所があるんだよ」とささやきかけてくる。
そして遥か上空に目をやると、太平洋に向かう旅客機の光が、この世にはさらに高みのある世界があるということを静かに物語っている。
『闇が輝きを際立たせる』
初めて見る世界に戸惑いつつも、意識を集中させ、操縦桿を握る手に力を込め、行くべき道を探り当てる。
心の視界が少し開けたような気がする闇夜の空中散歩。
本日のフライト時間:1.3時間
注記)上記のテクニカルな内容は勉強中でもあり、記載されている情報に誤りがある可能性もあることを、あらかじめご了承ください。もし、間違いに気づかれた際は、どしどしご指摘ください。